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水深800メートルのシューベルト|第34話
パパは手に押しつけられた薄い緑色の紙幣を、畳まれたまま自分の顔の前にかざした。みるみる緑色の瞳孔が広がった。
「五十ドル? ガキを三日間預かって五十ドルだと? ええ? お前はベビーシッターに飯代込みのたった五十ドルで預からせるのか?」
ママはキッと口を横に結んだ。少し間をおいてから声を少し震わせながら言った。
「悪いけどジョーンズ、前も言ったけど、あなたからの養育費頂いていないのよ。代わりに少しくらい預かってくれても良くないかしら? あなたにベビーシッターの代わりをして欲しいとは思ってないわ。ただ一緒にいて、ご飯を食べさせてあげればいいの。本来なら裁判所に訴えれば、強制的に養育費を差し押さえることもできるのよ。あなたも逮捕されるでしょうね。そうなったら、あなたは刑務所でトレーラーは売ることになるわよ」