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水深800メートルのシューベルト|第469話

彼女は、軽蔑したような目をして、ため息をついた。
「アシェル、君はまだ子どもだからわからないでしょうけど、私、他に頼れる人がいないのよ。親戚はいないし、お爺ちゃんたちとあいつは絶縁しているし。あいつから離れても行くところがないのよ。かといって、一人で暮らしていくお金も仕事もないし。そう簡単じゃないのよ」


「ご、ごめん」
 下から窺うように彼女を見た。僕よりもずっと大人で深いことを考えている彼女は、そのせいで苛立っているようだった。

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