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水深800メートルのシューベルト|第286話

 この日は歴史の授業だった。これが終わればランチだ。僕は、空腹でだるい体を起こして、暗がりの教室のスクリーンに浮かぶ、ハリケーンで水浸しになったスライドをちらちら見ながら、2005年、カトリーナ、ニューオーリンズと隣のホワイトボードに書かれた文字を丸写しした。


 教室にはメイソンたちのヒソヒソした声と含み笑いの音がしていたが、口髭をピンと伸ばした金髪の先生は気づいていないのか、何も言わなかった。


 授業が終わると、スライドは消え、教室はぱっと明るくなった。先生が出て行かないうちに、例のアラブ系の海軍が教室に入ってきた。

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