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水深800メートルのシューベルト|第1051話

艦は動いていないはずなので揺れや傾きで落ちる心配はないと、下層に続くラッタルでは手擦りも掴まずに降りて行こうとして、足を踏み外しそうになった。寝不足で頭がぼうっとしているせいかもしれない。もう少しでドジなエピソードが増えるところだったとヒヤリとした。いくつかの区画を仕切るハッチをくぐり抜けて、少し広めの廊室を右に曲がると、細長い医務室が見えた。ハッチは閉じないように固定されていた。


 ハッチの向こうにはストレッチャーがあり、人影も見えた。僕は、その影がゲイル先生ではないという気がしたので、先客だろうと考えた。診察中だと思い、通路の一角にあるハッチの斜め向かいの窪みに背をもたせて待つことにした。

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