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水深800メートルのシューベルト|第348話
「入隊者が出たら、ナージフさんの給料も上がるの?」
この緩んだ空気に、普段なら尋ねないような事も聞いてしまった。僕は、返事が来なくても再度聞かないようにしようと決めた。
「それもあるんだがな……」
彼は膝を手で押さえながら言った。少し驚いたが、気まずい空気にならなくて安堵もしていた。
「俺たちリクルーターはな、成績を出し続けなきゃいけないんだよ。誰も勧誘できないリクルーターなんて、この世界じゃ屑なのさ。だから、みんな学校に来ているし、中には街のスーパーマーケットにターゲットを探している奴もいる。入隊者が出なきゃクビだ。わかるか? つまりは、この痛む足を抱えて船に乗らなきゃならない」