「なあ、坊主。アデリーペンギンって知っているか?」
彼は手で、縦長の動物の形を作ってみせた。
「そのペンギンは、群れて崖の上に立って、お互いに押し合うんだ。こんな風に」
ナージフさんはゆっくり立ち上がると、お尻で僕を押してきた。
「そこが崖の境界で、そこから先にはみ出ると、数十メートル下の海に真っ逆さまだ」
彼は見えない線を描いてみせた。
「落ちたら危ないね」
昨日のマーシャルズビーチ手前にある崖を想像した。あれよりもっと高い崖で、しかも下に海があったら……。
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