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水深800メートルのシューベルト|第494話

「今日はたまたまよ。こんな悪い日もあるの。いつもじゃないの」


 メリンダは、目を細めて微笑していた。しかし、ドアの向こうから、
「メリンダ、早く戻って来なさい! 仕事に遅れるわよ。ママに恥をかかせる気かい?」
 と言う大声が響くと、彼女の表情は苛立ったものへと変わり、横目でドアを見て舌打ちをした。
「チッ、あいつは働きもしねえくせに」
 そして、すぐに僕を見て笑いながら言った。


「あはは、気にしないで。ママは私がいないと、どうしようもないんだから」
 僕は、何も言えなくなった。

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