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水深800メートルのシューベルト|第315話

「いや、今日は海を目的地にしよう。マーシャルズでいいや」(そうメイソンが言った)


 空はオレンジから藍色がかってきた。黄色の月がぼんやりと浮かび、その下をうっすらとしたオレンジ色の明かりをつけたアパートメントやビルディングの集団が見えている。高い建物がその中から天に向かうように尖った角を立てていた。それは、まだ大きなビルディングの少ないオークランドの未来の姿のようだと思った。それを見ながら、うちのボロアパートメントもいつか、埃の立たない立派な家に変わればいいのにと思った。

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