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水深800メートルのシューベルト|第93話
「アシェル。あの車はね、お酒の臭いがする人が運転しようとしても動かないのよ。本当のことを言ってくれる?」
(ママがそう言うのを)そこまで聞くと、パパが僕にお尻を叩きながら、息を吹くように言われたことと、関係があるかもと思い、喋ってみるとことにした。
「パパは、車を……運転したんだよ。その……前に、よくわからないけど、車の中の箱みたいなのに息を吹きかけるように言われて……」
お尻を叩かれたという前に、ママは目をカッと見開いた。
「アシェル! あなた言う通りにしたの? 信じられない! 子どもがそんな悪事に加担するなんて」
僕は何のことか理解できず、口をもごもごとさせていた。するとママは、
「あれは、息を吹きかけて『お酒飲んでいないから車を動かしてもいいよ』って確認する機械なの。運転するパパ以外の人が息を吹いたらいけないの。ああ、あなたは、なんてことを……」