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水深800メートルのシューベルト|第337話
メイソンが僕の肩を叩きながら、笑っていた。僕は、叩かれた途端に、こみ上げてくるものがあって、下を向いて咳き込みながら飲み込んだ海水を吐き出していた。胃の中がパンパンに膨らんでいて気持ち悪かった。
背中越しにブライアントの声が聞こえた。
「ほら、動くなって。今解くから……。な、メイソン。俺の言った通りだろ? 鞄にロープをつけた方がいいって」
顔を上げると、彼はやにさがった目で、ロープの先端の金属のフックを僕に見せつけた。
「俺のアイデアだぜ、感謝しろよ」
その嘲るような顔を見て、殴りつけたい衝動に駆られた。しかし、握った拳とは裏腹に、僕はエヘヘと笑みを浮かべていた。