「あ、ああ、喜んでいるよ。ありがとう、誘ってくれて」
僕は、シートから首を起こし、バックミラーに映るメイソンと目を合わせた。そこから、機嫌が直ったらしい彼は、エンジンをふかして、僕の背中は再びシートに貼りつけられた。
車は見覚えのあるバスで通る通学路を通り抜け、昔、オークランドにやって来た時に通ったベイブリッジにさしかかった。
「イエイ! 海まで飛ばすからな。覚悟しろよ!」
メイソンがそう言うと、両側をワイヤーで支えたブリッジを貫く道路をぐんぐん加速しながら、四車線ある道路の隙間に車を滑り込ませるように、右、左と、せわしなく車を操っていた。
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