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水深800メートルのシューベルト|第797話
その瞬間、どこからか爽快な風が頬を撫でたような気さえした。ダカーリの瞳は、動きが一瞬止まり、それからみるみる大きくなっていった。
「やっぱりな。やっと認めたな。俺を落として殺そうとしたんだ。この人殺しめ! やっぱりお前はギャング時代から本性が変わっていないんだな」
彼は声を荒げていた。お前が無理に言わせたんだろう? 腹が立った時の熱いものが中から湧いてきたが、それでいて投げやりで醒めた空気が僕の周りを覆っていた。自分の筋書き通りに他人が動いてくれることがそんなに嬉しいのだろうか? もう一人の自分が僕から離れて天井から二人を見つめているように冷静だった。