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水深800メートルのシューベルト|第285話
(21)
学校に慣れて周りを観察する余裕ができると、朝のバス停や、国旗の下で見かける軍人が校内の廊下や教室で、嫌でも目につくようになった。
バス停で、いつも見かける大きな鼻の陸軍は、僕を相変わらず無視するかのように、バスを降りるときに目が合ってもただ頷くだけだった。
国旗を掲げたポールにもたれかかる海軍のアラブ系の男も、やはり僕には無関心だった。そのくせ、僕がバスから降りた最後の一人だった時には、ゆっくりとした足取りで後ろをついてくるのだった。
それは、単なる暇潰しのように思えた。気になって振り向くと、彼は彫の深い顔を学校の窓や周囲のマルベリーの大きな幹の方に向け、僕には興味がないといった様子をみせるのだ。