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水深800メートルのシューベルト|第248話

 僕は「学費、百万ドル」の言葉が耳にじわっと広がると、思わず足を止めて海軍の顔を見た。彼は「ハーイ」と小さく手を振ってきた。


 慌てて前を行くバーナードに追いつくと、息を整える間も惜しんで訊ねた。
「学費って貸してくれるのか?」
 彼はにやにやと笑っていた。


「知らなかったのか? 大学に行きたい奴は、ここを卒業した後、何年も軍に勤めるんだ。そうしたら大学の学費を支給してくれるってよ。若い時の時間や命のリスクと引き換えにな。アシェル、お前大学なんか行きたいのか?」
 彼の驚いた顔に、僕は知られてはいけないことを披露してしまったように思えて、顔が熱くなった。

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