彼はひと呼吸おいてつけ加えて言った。
「ダカーリは気の毒だったと思う」
軍を辞めたことについて言っているのだと思った。しかし、軍に残るのと、そこから去ることのどちらが気の毒なのかは、判断がつきかねた。僕は流れるだけだ。
「元気でな、またどこかで会おうぜ」
彼はそう言ったきり、口を閉じた。
再び沈黙が空間を支配した。目を閉じてママの顔を思い浮かべようとした。悲しくならなかったらどうしようと不安だったが、もう会えないんだと自分に言い聞かせると、切なさが空っぽの心を満たしてきた。空っぽの心を悲しみで埋めるというのは奇妙なものだ。
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