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水深800メートルのシューベルト|第1161話
起きてぼんやりと目を開けていた。その黒目は虚空を見つめているようだった。考え事をしているというよりは、魂が抜けてしまったような感じだった。まさか、死んでしまったのではないかと不安になったが、じっと見ていると、肩がゆっくり呼吸に合わせて動いている。
ガチャリ、とハッチが重々しく開き、一人の男が入って来た。彼は酸素が放出される音を聞きつけると、慌てて後ろを向いてそれを閉めた。そして脇にあったホワイトボードを手にすると、ペンで書き込み、僕らの間を回ってそれを見せてきた。
「二人来てくれ。担架も準備するように」