確かに、大尉はいつも笑顔だ。潜水艦乗りの中でも特に。深い皺に刻まれた穏やかな表情を思い出した。
「だから、行くぞ。あの人はずっと大尉で止まっているからすぐに退役するだろうよ。俺の言う事を聞いておいた方が得だぞ。それに、お前が物品庫で周囲の目障りにならないように俺が発令所へ連れて行ってやるんだ。来い、命令だ」
彼は僕の襟を掴むと引っ張った。配置から離れるのは規則に反するが、兵曹長の命令なら従うしかなかった。そこで、飛び跳ねるような男の後を、やはり左右のパイプやデッキの淵を手摺り代わりに交互に掴みながら、突き当りに見える人だかりの方へと向かった。
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