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水深800メートルのシューベルト|第338話

「助かったよ。ロープがなかったら溺れていたもんな。ありがとう」
 なんだか、(僕の)本能が勝手に口を動かしているようだった。心の底でわだかまりを抱えながら、これでいい、これが一番の良い返事なんだと、自分に言い聞かせた。


「おい、バーナード、アシェルは泳げなかったから、帰りの橋の料金はお前持ちな?」
「ええ? アシェルは泳いで戻って来たじゃん。ロープの助けはあったけどさ」


 バーナードは不満げに言った。そして、岩の上に寝そべると、こんな風にと言わんばかりに、足を大げさにバタバタと動かしていた。

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