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水深800メートルのシューベルト|第1036話

ロバートは悔しそうに唇を噛んでいたが、やがてくるりと背を向けると、僕に声をかけることもなく歩き出した。


 ゴゴゴゴ、ズーン!
 その時、床下から衝撃が走った。ロバートの背中を追うとして体を反転させた僕は、バランスを崩して前に倒れ込み、腕を固い鉄板に叩きつけられるようにぶつけた。
「ヒッ!」と思わず声が出て痛めた腕を抱え込んだ。地響きのような揺れと音がそれから何度も続き、瞬間的に事故が起きたと直観した。


 揺れが治まってゆっくりと立ち上がると、通路の壁のパイプにしがみついているロバートの背中が見えた。すると、急に通路の電気が消え、あたりが真っ暗になり、背中も闇に包まれた。お婆ちゃんの家で落雷があった時のように怖くなった。

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