水深800メートルのシューベルト|第1097話
「せめて、海上に味方が来るまで待とうよ」
僕は宥めるように言った。彼はこっちを見つめて、すぐに下を向いた。
「畜生! 俺は何もしてねえのに!」
その時、通路から部屋に漏れていた仄かな光が遮られたので、みんなが一斉に開け放してあるハッチの方を見た。光を塞ぐ人影があった。闇に目を凝らしてみると、ついこの間見た顔だと気づいた。原子炉操作士官のノーマン中尉だった。
「はい、お喋りはそこまでだ」
彼は残念そうに言いながら、居住区を珍しそうに見渡した。アフリカ系で、体幹は太くないが背の高い彼は、ハッチに頭をぶつけないように慎重に体を曲げてくぐって、ベッド近くまでやって来た。そして、僕やセペタやロバート、ボブや僕を確認するように見つめた。