水深800メートルのシューベルト|第1096話
「なんて無謀な奴だ。どのみちあれが使えるのは水深二百メートルまでだ。たしかトラブルが起きたのは四五百メートル地点だったから、もっと深いところに着底したかもな。脱出筒は多分持たない」
ボブが、呆れたように言った。
「無理だって。ロバートも本当はわかっているんだろう?」
セペタが話を引き取った。
「それに万一、水面に出られたとして、どうする? 南太平洋の暗い波間に永遠に漂流することになるぞ。捜索も困難だろうしな。低体温か、餓えで死ぬだけだ」
「うるせえよ。こんな海底で日も見ないで、酸欠で死ぬよりましさ」
ロバートは強がってみせたが、声に力はなかった。