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水深800メートルのシューベルト|第459話

開いた窓から焼けたエンジンの臭いに混じって花の香りが鼻の奥に広がった。外にはキンボウゲの赤や黄色の花が、ぽつぽつと咲き始めていた。それを見て、僕は、彼女に花束を買っていかなかったことを後悔した。しかし、僕らの高校では、そんなプレゼントをしている奴は誰もいないし、噂も聞いたことがないと思い直した。


それにしても、メリンダは花が好きなんだろうか? 他に好きなものがあるのだろうか? 食べ物は何が好きなんだろうか? 彼女の金の髪や目の色、体の線を思い出しながら考えていると、ふと、僕は彼女のことを何も知らないと不安な気持ちになった。

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