水深800メートルのシューベルト|第402話
頭の中が激しく回転する中で、無性に腹が立ってきた。こんなに気分が悪いのに、誰も心配してくれない。そういえば、昔パパにぶたれてもママは助けに来なかったっけ。ふと、古いモスグリーンのトレーラーハウスと森の色が、頭の渦を染めた。
「それに、あそこに、あそこに立ちんぼがいる。ガキっぽいがさっきよりずっと美人だ。周りには人がいねえ。こんなチャンス逃したら勿体ないだろ?」
メイソンは僕の胸ぐらを掴みながら言った。
「ほら、見習い、しっかりしろ! これに合格したら、正式に俺たちの仲間にしてやる。その懐のモノを、あの女に向けて『金をよこせ』とだけ言ってこい。後は俺たちがやってやるから」