「あなたの養母であるオリビア・ハリスさんのことで……」
電話の向こうの声は急に弱々しいものへと変わった。
「どうしました? お婆ちゃんに何か」
「実は、仕事先の店舗で、強盗に遭い、怪我を負いまして……。病院に搬送されております。大変重篤です。病院の場所を教えますから、すぐに来てください。住所は……」
途中から、言いにくいことを早く済ませてしまおうとしたのか、早口になった。僕は、現実にあることとは思えず、足がふわふわと浮いたような気分のまま、手が勝手にメモとペンを探し当てて、言われた通りの住所を書き留めていた。
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