水深800メートルのシューベルト|第1093話
「まだ決まったわけじゃない。それに、食料も酸素もまだあるんだ。バッテリーも原子炉の復旧までは持つだろう。それまでは不安だろうが、なあに、中世の蝋燭や灯火しかなかった時代を想えばどうって事はない」
「俺の家は、よく電気を止められたんだ。暗かったが、親父が発電機を回してくれておかげで真っ暗という事はなかったな」
ロバートが調子を合わせるように言った。
それきり、みんな黙りこくってしまった。セペタは柵の切れ目から両腕を回して抱きかかえるようにし、一段下のベッドを見つめていた。そこには人の気配はなかったが、ロバートはじっと視線を落としたままだった。ボブはロバートの居るベッドに立ったままもたれ、明かりが漏れている通路に首を向けていた。しばらくして、ロバートが耐えきれない様子で口を開いた。
「で、原子炉がこのまま動かなくなったら、どうなるんだ?」
それは、独り言のようで、誰にも目を向けずに放たれていた。