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水深800メートルのシューベルト|第588話
冷蔵庫から、セブンアップのボトルを取り出して、コップに注いだ。カラカラに乾いた喉を液体が焼き付けるようにして流れ、疲れが飛んだような気になった。まさか、あいつの兄貴の……。そう思った時、スマホの着信音が鳴った。
飲み物を飲んで気分が爽快になりかけたところから、奈落に落とされた気分だった。着信がお婆ちゃんからであるますようにと祈りながら画面を見たら、知らない番号だった。僕は震える手で通話ボタンを押すと、男の冷静だが強い感じの声が耳に刺さった。
「アシェル・スコットさんですか? こちらはオークランド市警察ですが」
僕は返事をしようかどうか迷った。いよいよ取り調べの時が来たのだ。ラスウェルさんの助言を思い出し、ひと呼吸置いて「そうです」と答えた。しかし、次に耳にしたのは、予想もしていない言葉だった。