その男の視線には芝生が終わりかけるあたりから気づいていた。最初はメイソンの仲間かと思ったが、見た顔ではないし、少し近づいて見ると高そうなスーツを着て僕らよりだいぶ大人だった。メイソンの兄貴……。それも考えたが、普段メイソンから聞いていた雰囲気とも違った。その目には噂の彼と違ってどう猛さが全くなかった。鋭い目でちらちらとこちらを見てくるその目に、拠り所のない不安を感じたが、引き返すわけにはいかなかった。きっと警察官だ、そう思うともう逃げられない、逃げてもその先は居心地の悪い学校だ。
僕は、覚悟を決めて、男のいるバス停へと歩いて行った。
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