「アシェルは、このまま除隊したら、自分を保てなくなる。そう思うのよ」
彼女は懇願するように言った。
「ねえ、お願い。私、サンディエゴにアパートメントを借りるから。そこは叔母の近くだから、家の事は手伝ってもらえるわ。でも、アビアナには父親が必要なのよ。その点、アシェルは子どものころから苦労しているからきっといい父親になれるわ。うってつけよ。一緒に暮らしてくれない? 結婚が嫌なら住み込みのベビーシッターとしてでもいい」
その言い方に、僕の心は揺れた。しかし、なぜ僕なのか、なぜこんな提案を持ち出したのか、わからなかった。
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