メイソンが顎をしゃくって後ろのドアを示した。そこで、僕は車のドアに手をかけているバーナードの反対側に回り込んでドアを開け、身を屈めて狭い空間を手で探るようにして乗り込んだ。
エンジンの音は外で聞くよりもずっと穏やかだった。ドン! という衝撃と共に背中が後ろのシートに押しつけられた。胸が圧迫されたようで一瞬息が止まり、キキキというブレーキ音と共に今度は体が横のドアに押しつけられて、どっと息が出た。グルグル目まぐるしく変わる前の景色に慣れないでいると、メイソンの苛立った声が聞こえてきた。
「アシェル! 何か言うことねえのかよ? 乗せてやったのに」
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