「さあな。そもそも、一人で暮らすって言いだしたのは君だろ?」
ラスウェルさんは、信号で車を止めて、灰色の瞳を向けて尋ねた。
「卒業したら海軍に行くと言うのは、本心か?」
静かにうなずくと、彼は続けた。
「あの母親と一緒に暮らすのは無理だ。君だってそんな予感がしていたんだろう? 正解だと思う。あの女は――すまん、君のママだったな――頼れる男がいないと生きていけないタイプだ。依存的だな。そして、母親としての役割よりも、男を優先する」
「そんな風に思っていたんじゃありません。ママはきっと生きるのに精一杯なんです。僕が負担になるわけにはいかないんです」
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