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水深800メートルのシューベルト|第436話

「悪いけど、子どもの相手はしないの。それに、高いんだから」
 彼女は軽蔑したように、空色の目を向けてきた。


「金はあるよな、アシェル?」
 メイソンの言葉に、僕は財布をちらっと見せた。中から札を取り出すべきどうか迷っていると、彼女は面倒臭そうに言った。


「いいわよ。近くにモーテルがあるから。歩くけど」
「俺たちが車で送って行ってやろうか? どこだ」
 メイソンはにやにやと笑いながら尋ねた。彼女は首を振った。


「悪いけど、知らない人の車には乗らないの。それに私の相手をするのはこの坊やボーイでしょう? 観客がぞろぞろついて来て、ホテルの前で待っているなんて考えるだけで、この子のアレが縮こまっちゃって、役に立たなくなるわ」
 メイソンはおどけて、両手を上げた。

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