しばらくすると彼女は振り返って「その階段を昇って、二階よ」と僕に告げてきた。
ずらりと並ぶ青い扉の一つを開けて部屋に入った。建物の古い見た目とは打って変わって、中はきれいで新しく見えた。グレーの木目の床を踏む度にギシギシと音がした。ベッドには皺ひとつない灰色と白の格子柄の掛布団があった。なぜか、そのベッドを見ただけで不安になり、ジェシカに目を向けた。
彼女は、無造作に白いコートを脱ぐと、金色の頭を振り、「ちょっと暑い」と言いながら、ヒーターのスイッチを慣れた手つきでいじっていた。黒いワンピースは体の線がくっきり見えて、お尻と胸が強調されているようだった。
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