見出し画像

水深800メートルのシューベルト|第247話

「あれはやる気ないよ。勧誘しようともしていないんだから」

 バーナードの言葉に、僕の目は彼の風貌に釘付けになった。カーキ色の帽子を斜めにかぶり、濃い色の肌と彫の深い顔立ちは、戦地をかいくぐった外国人兵士のように見える。垂れ下がった目は全てを悟り、冷笑しているようであった。

「アジア系かな?」
 僕はバーナードを肘で押した。

「いや、多分、アラブ系だよ。髭は剃っているけどな」
 彼は興味がないといった態度を手振りで示した。
「いくら、学費を援助してくれるって言ってもな、俺なら百万ドル貰っても軍隊なんてお断りだぜ」

     第246話へ戻る 第248話へつづく



いいなと思ったら応援しよう!