水深800メートルのシューベルト|第1048話
寝台室のハッチの前で、ロバートと別れ際に、彼は欠伸をしながら言った。
「やっと少しは眠れそうだ。そうだ、アシェルお前、支給品を届けるとか言って、発令所を覗いてこいよ」
どうしてこの男は、人をトラブルに巻き込もうとするのだろうか? そう思いつつ、笑って「そのうちに、やってみるよ」とだけ答えた。
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二日間が過ぎた。艦はどうやら着底したままで、動きはないようだった。僕はハドソン大尉の指示に従って、乗組員の給与電子明細の整理をしたり、備品の在庫の確認をしたりしていたが、他には全くする事がなかった。体が疲れていないせいなのか、それとも艦内の状況がわからないのが不安なせいなのか、休憩時間になっても眠気が訪れず、そのくせ、苛立ちと微細な音への過剰な感覚だけが、一時間ごとに湖の底の泥のように積もっていって、目は益々冴えるのだった。
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