フェンスにもたれていたジョーは、ゲイルさんに言った。
「親父、もうつき合ってやったんだからいいだろう? 行こうぜ。俺、この後友だちとオンラインゲームに入る約束をしているんだけど」
ゲイルさんは、息子の方を振り向いて頷いた。少年は嫌々といった風に、僕の元へ近づいて来た。
「今度、アシェル兄さんの休暇中に宿題でも見てもらえ」
彼の言葉に、ジョーは肩をすくめた。
「俺、さっきの美人の姉さんの方がいいな。泣きながら出て行ったけどね。兄貴もやるもんだね」
彼は拳で僕の胸をついた。兄貴という呼び方とその内容に戸惑い、曖昧に笑うことしかできなかった。
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