実在するチームのようなリアリティあるローンチストーリー「FIFA 23 × Ted Lasso」
Summary
イギリスのサッカーチーム監督の奮闘を描くApple TV+の「Ted Lasso(テッド ラッソ)」は、エミー賞を4回受賞し、世界で最も成功したテレビコメディ番組の一つである。
この番組は、試合後のインタビューをSNSに投稿したり、主要キャラクターのTwitterアカウントを作成するなど、実在のチームのように活動するマーケティングを成功させてきた。さらなる新規視聴者の獲得のために次に注目したのは、世界で最も人気のあるスポーツビデオゲーム「EA SportsのFIFA 23」。このゲームに架空のチームとして組み込まれることで、既存ファンへのマーケティング活動を推進すると同時に、ゲーマーという新しい層の獲得を期待できるのではないかと考えた。
しかし、このコラボを大々的なスポンサーシップのように見せると、ゲーマーに受け入れられない可能性があった。
その原因は、「ドラマ上の架空のチームは、このゲームにふさわしくない」というFIFA 23ゲーマーの心理にある。なぜなら、FIFA23は世界中の本物のサッカーチームがプレイできることを売りにしているためだ。
その心理の奥には、「本物のチームを操ってリアリティを感じたい」というゲーマーのインサイトがある。これは「実在していると錯覚することでリアリティを感じたい」というドラマファンのインサイトとも合致する。
このインサイトに応えるために、Ted Lassoは、「架空のサッカーチームでも、実在するチームかのようなリアリティある活動ができる」という事実に着目。FIFA23ゲーマーとドラマファンの両方が没入できるリアリティある演出ができないかと考えた。
そこで、360度モーションキャプチャスキャンで取得した主人公の後頭部をフィーチャーしたティーザー投稿や、番組ライターと協力して開発した本物の選手評価統計など、本物のチームの参加のように見せるリアリティあるローンチストーリーを打ち出した。
このアプローチにより、「FIFA 23の魅力は、世界中の本物のチームが操れる面白さだけでなく、ドラマ上の架空のチームもリアリティもって操れる面白さである」という価値変容を通じて、エミー賞を4回受賞した時よりも社会的な話題を集め、Apple TV+での「Ted Lasso」の視聴回数の増加に寄与した。
※施策タイトルからはFIFA 23とTed Lassoのパートナーシップという「枠組み」のアイデアの話と感じるが、ケースムービーとディスクリプションによると、リアリティを重視したローンチストーリーという「プロモーション手法」のアイデアの話であった。タイトルと中身に少し乖離を感じた(筆者談)。
Deconstruction
Brand
Ted Lasso(テッド ラッソ) - イギリスのサッカーチーム監督の奮闘を描く、Apple TV+のテレビコメディ番組。エミー賞を4回受賞。試合後のインタビューのSNS投稿や、主要キャラクターのTwitterアカウントなど、実在のチームのように活動するマーケティングを成功させている。
Target
FIFA 23ゲーマー。
Objective
新しいゲーマー層の獲得を期待して、世界で最も人気のあるスポーツビデオゲーム「EA SportsのFIFA 23」とのコラボレーションを計画したが、大々的なスポンサーシップのように見せると、ゲーマーからの受け入れられない可能性が高い → ゲーマーから受け入れられるような方法でコラボを成功させる。
Barrier
ドラマ上の架空のチームは、このゲームにふさわしくない。
Insight
本物のチームを操ってリアリティを感じたい。
(実在していると錯覚することでリアリティを感じたいという既存ファンのインサイトとも合致)
Thought starter
「架空のサッカーチームでも、実在するチームかのようなリアリティある活動ができる」という事実に着目。FIFA23ゲーマーとドラマファンの両方が没入できるリアリティある演出を目指す。
Idea
"FIFA 23 X Ted Lasso"
360度モーションキャプチャスキャンで取得した主人公の後頭部をフィーチャーしたティーザー投稿や、番組ライターと協力して開発した本物の選手評価統計など、本物のチームの参加のように見せるリアリティあるローンチストーリー。
Transformation
FIFA 23の価値変容
世界中の本物のチームが操れる面白さ → ドラマ上の架空のチームもリアリティもって操れる面白さ