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「クレショフ効果」とは

【表】

外国人が話す。松本さんが一言返す。

あたかも外国人が何を喋っていたのか松本さんには理解できており、そればかりかその返しによって両者の会話が成立しているような、そんな錯覚を起こさせる映像。

これはダウンタウン松本さんの『12か国語を話す男』というコントです。

最初に観た高校生の頃は面白ぇなぁと思っただけでしたが、映画学を学んでからは多少ちがった視点でも見るようになりました。

なぜなら、このコントには、ある映画理論が応用されているからです。

それは

クレショフ効果です。

言葉で長々と語るより次の画像を観てもらった方が感覚的に掴みやすいと思います。

上から順に「悲しみ」「空腹」「欲情」という意味。

正面を向く男が、中央の写真3つとリンクされるや否や、それぞれ異なった感情を持つように見えるのではないでしょうか?1枚目と3枚目は同じ写真のため当然ながら男の表情も同じはず。にも限らずなぜか違って感じられる。そして男の感情が理解できたよう気がする。

① 男の感情は分からない
② 棺桶に入った女性がいる
③ 男が悲しんでいると分かる

これは人間の認知バイアスが原因らしいのですが、面白いのは意味はいくらでも後付けできるという点、また組み合わせ次第でそれはどうにでも変換可能であるという点、更にはその読みは正確でなくても構わないという点です。

つまり「男は悲しんでいる」といった感情もあくまで後発したにすぎない。また中央の写真を別のものに取り替えれば、それに応じて男の感情も取り変わります。更につまるところすべては憶測でしかない。

これを基に『12ヶ国語を話す男』を考えてみます。

① 外国の方が何かを訴えているが理解はできない
② 松本さんが返答する
③ 彼らの話していた事が何となく分かったような気がする
※ ③のショットはほぼ省略されている

ただ雑多にショットとショットを並べてしまう。すると解釈不能だったものが解釈可能になったりする。意味は遅延してやってくる。

おもしろい。

【裏】

ところでクレショフ効果はなにも創作の世界に限られた話でもないと思うんです。というのは日常の世界にもそれは発揮されている。

だからちょっと大胆なことをいうと「現実でも映画は発生している」「現実は映画している」という感じ僕は、日常の中に映画を発見するのが、大好きです。

例えば、以前、会社でこんなことがあった。

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