映画の不純な楽しみ方

26歳 | アメリカ留学5年 | 映画学専攻

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    あらゆる角度から「映画」を楽しむ方法を紹介・模索しています。

最近の記事

なぜヨーロッパの森は絶望で、アメリカの森は希望なのか?

【表】ヴォルデモートは森にいるえてしてヨーロッパの作品は森を「悪いもの」として描きます。 『ハリーポッター』シリーズに登場するホグワーツ城ちかくの広大な森は「禁じられた森」と呼ばれており、そこには危険な生き物が生息するといわれていて、生徒たちは立ち入りを禁止されています。シリーズを通してハリーたちはたびたび森に入らざるをえなくなりその都度やっぱり危険な目にあってしまう。『賢者の石』で宿敵ヴォルデモートがはじめて登場したのも『死の秘宝part 2』で彼がその軍団をひきつれ陣営

    • マーヴェリックは水を飲む

      【表】 僕は作中のあることが気になっていました。 それは マーヴェリックが墜落した2つのシーンに共通点があるということ。 オープニングの実験飛行の際。ルースターを救うために被弾した際。マーヴェリックは2度墜落しています。それに深い理由があると言いたい訳ではないですが、この辺りになぜか僕はそそられました... ところで物語には固有のリズムがあるといいます。 またリズムは単調な繰り返しではなく微妙な差異を伴いつつ反復される。男女が出会い関係が生まれる、数年後に再会して

      • 松本人志のコントはしかし映画である

        【表】 外国人が話す。松本さんが一言返す。 あたかも外国人が何を喋っていたのか松本さんには理解できており、そればかりかその返しによって両者の会話が成立しているような、そんな錯覚を起こさせる映像。 これはダウンタウン松本さんの『12か国語を話す男』というコントです。 最初に観た高校生の頃は面白ぇなぁと思っただけでしたが、映画学を学んでからは多少ちがった視点でも見るようになりました。 なぜなら、このコントには、ある映画理論が応用されているからです。 それは クレショ

        • 心を動かすカメラの距離

          【表】 「カメラがどれくらいの距離にあるか」は重要です。それは僕ら観客の心理に強く影響しているからです。 次のような映画理論があります。 熱されて、冷まされる。 ①から②へ移ると、僕らは急激な温度差を体験させられます。 もしも①がロング・ショットによって撮られていれば(それも可能だったはず)このような感情の温度変化は起こらないのではないでしょうか。 カメラの距離ひとつで、観客の心理は大きく左右されます。 だから、このシーンで僕らはつい笑ってしまうわけです。 【

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          アメリカの映画学部生がいちばん最初に教わること

          僕は、映画が好きだったので、アメリカに留学をしました。 父親が大の映画ファンであり、家のリビングには夥しい量のDVDが収納された棚の置かれた一隅があって、そこから一枚選んではDVDプレイヤーにセットする。TSUTAYAやゲオにも足繁く通う。金曜ロードショーは欠かさない。そういう少年時代を過ごしました。 ただ同年代の友達に比べて映画を観ている数は多いという自覚はあったものの、18歳で映画を学ぶために留学した時でさえ、あくまで僕は映画を「純粋に楽しんでいた」に過ぎなかったと思

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          英文法で読み解く『ジョーカー2』

          昨日TOHOシネマ新宿で観てきました。終わった直後、2人組の男性があれこれデカい声で感想を言っていたのですが概ねマイナス評価でした。それは良いんですが彼らの共通の見解が「イメージと違った」という点だったことに、僕はなんとなく違和感を感じたんです。 彼ら2人に限らず、この映画に失望した人って結構いるんじゃないかと思います。おそらくみんな「ジョーカーを観に来たのに、アーサーを観させられたから」じゃないでしょうか。でもその不満って僕はちょっと怖いなという気がするので今日はそれにつ

          英文法で読み解く『ジョーカー2』

          表情と感情のラブロマンス

          映画『ジョーカー』の主人公アーサーは、脳の障害により笑いたくなくても笑ってしまう病を抱えています。そのため笑うべきではない、笑ってはいけないような状況や環境でさえ笑ってしまい、またそれを抑えることができません。バスの中で笑いが発作的に現れて周囲の人々に奇異な目で見られたり、電車の中で笑いが抑えられずにサラリーマンから反感を買ってしまったりする。 彼の笑いは発作的に現れる。彼は笑顔という表情に振り回されているわけですね。いわば表情は、彼の感情と関係ない独立したもの、になってい

          表情と感情のラブロマンス

          英文法で読み解く『ジョーカー』

          この映画って「学園モノ」として観ることもできると思うんです。 ストーリーだけ追えば「良い人だった主人公が社会に疎外され、あげく闇落ちした悲惨な話」というところでしょう。でも「ユーモアによってクラスメイトを支配する学校のお調子者の話」そんな見方もできると思います。一見チープな言い方ですが、わりとディープな話へ入ります。元留学生らしく、英語の知識を応用して、この作品の新たな一面を映し出してみます。 主人公のアーサーはコメディアンに憧れています。人を笑わせることをしたい。ここで

          英文法で読み解く『ジョーカー』