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ガウスの法則

始めに

今回はガウスの法則について解説していきます.




定義(積分形)

ガウスの法則とは,以下の通りです.

ある閉曲面$${S}$$を垂直に貫く電気力線の本数の総和(=電場の大きさの総和)は閉曲面$${S}$$内の総電荷量を$${ε_0}$$で割ったものに等しい.

これを数式で表現すると,

$$
\displaystyle \int_S \bm{E}・d\bm{s} = \dfrac{1}{ε_0} \int_V ρ  dV
$$

※SやVを含む積分はそれぞれ面積分や体積積分と言います.

ここで,

$${ \rm{電場ベクトル:} \it{ \bm{E} }  \rm{ [V/m] } }$$
$${ \rm{微小面積ベクトル:} \it{ d\bm{s} }  \rm{ [m^2] } }$$
$${ \rm{真空の誘電率:} \it{ ε_0 }  \rm{ [F/m] } }$$
$${ \rm{電荷密度:} \it{ρ}  \rm{ [C/m^3] } }$$

です.


イメージ

下記の図のようになります.




すなわち,ガウスの法則は,「電荷がどのくらいの電場(電気力線)を作れるのか」を示します.


補足 電気力線と電場(ガウスの法則)

電場の強さが $${ E  {\rm{ [N/C] }} }$$ の場所では,電場に垂直な面を単位面積 $${ (1m^2) }$$ あたり $${ E }$$ 本の電気力線が貫くものとする。

すなわち,「電気力線密度=電場」です.


定義(微分形)とガウスの定理

 ガウスの法則に限らず,今後学習していくマクスウェル方程式には「積分系」と「微分系」が存在します.実際にどういう意味があるのかは今説明しても良く分からないと思うので,とりあえず幾何学的に導出してみましょう.

式を変形するに伴い,ベクトル解析の重要な公式である「ガウスの(発散)定理」を使う必要があります.


ガウスの定理

ガウスの定理は以下のような定理です.

(ベクトル場の閉曲面の面積積分)=(ベクトル場の発散体積積分

面積分を体積積分に変換することができます.
数式で書くと,あるベクトル場を $${ \bm{A} }$$ としたとき,以下のようになります.

$$
\displaystyle \int_S \bm{ A } ・ d \bm{ s } = \int_V \bm{∇}・\bm{A}  dV
$$

これらの定義を見るよりもイメージを浮かべた方が分かりやすいと思います.下記の画像のような感じです.


ある領域の閉曲面 $${ S }$$ の表面から出るベクトル場の総和を考えます.
このとき,このベクトル場は,微小体積 $${ dV }$$ から出るベクトル場(=ベクトルの発散)の総和と等しくなります.
面積分と体積積分と等しくなるのは,接触面でのベクトル場は互いに打ち消し合うからです.


微分形の導出

ガウスの定理を用いて変形していきます.

まず,ガウスの法則から,
$${\displaystyle \int_S \bm{E}・d\bm{s} = \dfrac{1}{ε_0} \int_V ρ  dV}$$

次に,ガウスの定理から,ガウスの法則の左辺は,
$${\displaystyle \int_S \bm{ E } ・ d \bm{ s } = \int_V \bm{∇}・\bm{E}  dV}$$

以上より,
$${\displaystyle \int_V \bm{∇}・\bm{E}  dV = \dfrac{1}{ε_0} \int_V ρ  dV}$$
となります.

ここで,両辺で同じ領域を積分していることから,積分の基本定理より,インテグラルを含む積分を外すことができます.
※この定理には特定の名称がある訳ではありません.

したがって,両辺の体積積分を外すと,
$${\displaystyle \bm{∇}・\bm{E} = \dfrac{ρ}{ε_0} }$$
が得られます.

定義(微分形)

よって,ガウスの法則の微分形は以下の式で表されます.

$$
\displaystyle \bm{∇}・\bm{E} = \dfrac{ρ}{ε_0}
$$

このイメージは,図3で左辺が微小体積からのベクトル場を表していたことから,「電荷から電場が湧き出す」という風になります.


積分形と微分形の比較

「積分」と「微分」という単語に表されるように,
「積分」は「分けたものを積み上げる」ので,広域の範囲についてまとめて考えることができ,「微分」は「微かに分ける」ので,単位量(微小量)の範囲について求めるものです.

ガウスの法則についてのイメージは下の図のようになります.



例 積分系の計算

<問>
真空中に置かれた,総電荷量 $${ Q }$$ [C],半径 $${ r }$$ [m]の球が作り出す電場を求めなさい.
ただし,真空の誘電率を $${ ε_0 }$$ とします.

<解>

ガウスの法則から,

$$
\displaystyle \int_S \bm{ E }・d \bm{s} = \dfrac{ 1 }{ ε_0 } \int_V ρ  dV
$$

まず,左辺から解いていきます.
系の対称性から,電場 $${ E }$$ はどの点においても等しいので積分の外に括りだせます.このとき,閉曲面に垂直な電場を $${ E }$$ とすると,内積をスカラー積に置き換えることができるので,

$$
\displaystyle {\it (左辺)} = \int_S \bm{ E }・d \bm{s} \\
= \int_S E  d s \\
= E\int_S d s \\
=E・4πr^2
$$

球の表面の面積分(=球の表面積)は $${ 4πr^2 }$$ なので,上記のように変形できます.

次に,右辺を解いていきます.
問題から総電荷量が $${ Q }$$ [C]であることが分かっているので,

$$
\displaystyle \int_V ρ  dV =  Q
$$

となります.したがって,

$$
\displaystyle {\it (右辺)} = \dfrac{ 1 }{ ε_0 } \int_V ρ  dV = \dfrac{Q}{ε_0}
$$

以上より,最初の等式は,

$$
\displaystyle E・4πr^2 = \dfrac{ Q }{ ε_0 }
$$

これを,電場 $${ E }$$ について解くと,

$$
E = \dfrac{Q}{4πε_0r^2}  {\rm [V/m] }
$$

これは,皆さんご存じクーロンの法則と同じものとなります.


定義(磁場のガウスの法則)

先程までは,電場(電荷)について述べていましたが,磁場(磁荷)についても似たような法則が存在します.しかし,電場とは決定的に異なる部分が存在します.
実際に定義を見て確認していきましょう.
今回は積分形と微分形をまとめて示します.

$$
\displaystyle \int_S \bm{H}・d\bm{s} = \bm{0} \\
 \\
\displaystyle \bm{∇}・\bm{H} = \bm{0}
$$

電場と比較すると,積分形と微分形ともに右辺が0になっています.これが何を意味するかと言うと,
積分形においては,「閉曲面における磁場の入出量の総和は0となる」となり,
微分形においては,「単独の磁極は存在しない」
となります.

特に後者の方が重要で,単独の磁極が存在しないというのは,N極だけ,S極だけの磁石は存在しないということです.
もし,見つけられたらノーベル賞ものだとか.
小学校のときに磁石で遊んだ方なら知っていると思いますが,磁石はどれだけ細かく切ってもN極とS極に分かれています.決して片方の極だけの磁石にはなりません.
それを数式で示したのが,磁場のガウスの法則です.



終わりに

電場・磁場ともにガウスの法則は電磁気学を構成する重要な法則です.
積分形から微分形の変形もできるように計算方法を身につけておきましょう.


参考

大学物理のフットノート ガウスの法則


大学物理のフットノート ガウスの定理


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