お酒知識編🥃アードベック蒸留所~アイラ唯一の製法とは~
今回紹介する蒸留所は、アードベック蒸留所です。
アードベックとは現地の言葉で小さな岬を意味し、その名の通りアイラ島南岸にあり、大西洋に突き出た磯端に立っています。
このアードベック蒸留所の特徴は、
強烈なピート香、そしてその中にかすかに香るフルーティーさです。
そんなアードベック蒸留所はどんな蒸留所なのか見ていきましょう。
概要
記録によると、アードベック蒸留所の最初の操業は1794年になります。
そこから正式にライセンスを付与され、稼働したのが1815年です。
ですが、そこから閉鎖や操業再開を繰り返し150年後の1997年に、グレンモーレンジ社が買収し、現在に至ります。
ちなみに、グレンモーレンジ社とはスコットランド本土の、ハイランドに蒸留所を構えています。
美しい柑橘系の香りや、樽の熟成を極めている蒸留所です。
そのグレンモーレンジ社が買い取り、10年後の2008年に経営が変わって初めてのウイスキーが製品化されました。
そんなアードベック蒸留所ですが実は、年間の生産量がとても少ないのです。
大量生産しているスコッチウイスキーが年間約2100万リットルに対し、アードベック蒸留所は、1/20の115万リットルしか生産していません。
この数は、ほかのアイラ島のものと比較しても1/2程度となっています。
というのも、アードベック蒸留所はウイスキーを作るのに必要な設備(ポットスチル)が一つしかない為、生産量が他と比べて少ないのです。
それに加え、バランタインというブレンデッドウイスキーを作るための肝となる原酒として使用されるためシングルモルトとして流通されるのは、更に少なくなっています。
そんなウイスキー、アードベッグには製法に4つのこだわりがあります
一つずつ見ていきましょう。
こだわりの製法
ピートの数値
1つめはピートの数値です。
ピートとは泥炭であり、何千年とかけて海藻や植物が堆積し、炭化した物の事を言います。
このピートを燃やして、出た煙を麦芽にさらすことにより独特の香りをつけることができます。
そして、この麦芽についたピートの強さを表す単位がppmというのですが
アードベッグの数値は最上に位置しているのです。
一般的に、
ライトピートと言われる物で、10ppm以下
ミディアムピートで25ppm程度です
そして、40~50ppmのものをヘビーピートと言います
アードベックは、このヘビーピートに位置し
約60ppmの値です
あくまで目安ではありますが、基本的に数値が上がるほどピート特有の香りは強くなり、アイラ唯一無二と言える香りを生み出します。
補足情報として、
現在アードベックが使用している麦芽は発注しているものです。
同じアイラ島に、ポートエレン蒸留所というところがありそこに、こういう麦芽が欲しいとオーダーをし麦芽だけを作ってもらい、それを使用しています。
ポートエレン蒸留所はしばらくウイスキーを作っていなかったのですが
2024年の三月に稼働を再開しました。
仕込み水
二つ目はウイスキーを作る為の仕込み水にあります。
ウイスキーを作る工程は麦芽を粉砕し、仕込み水と合わせたのち発酵してできたものを蒸留するのですが、この時に使われる仕込み水に秘密があります。
なんと、見た目が真っ黒の水が使われるのです。
ウーガダール湖という場所の水を使用するのですが、湖の水が見事に真っ黒なのです。
理由は、ここでもピートが関係しており、水がピートの層をゆっくり通ってきてその成分をたっぷりと蓄えた結果、黒色に染まったというわけです。
ただでさえ、ピートの値が高い麦芽を使用しているのに追加でピートの水を使用するところに、ピートに対する並々ならぬこだわりを感じますね。
精留器
三つめはアイラ唯一の精留器を使用している点です。
精留器とはピューリファイアと呼ばれ、蒸留の工程で使用されるものでウイスキーにフルーティーな香りをつけるための役割を果たします。
詳しく見ていきましょう。
通常、蒸留されたウイスキーはポットスチルからラインパイプを通って、冷却器に送られるのですが、精留器を使用する場合、ラインパイプの中間に設置されます。
ここで更に蒸留と似た様な働きをします。
蒸留は水とアルコールの沸点の違いを利用してアルコールを抽出することを言うのですが、詳しく見るともっと多くのことがポットスチルの中で行われています。
それは、ウイスキーの香味成分となる物質の抽出です。
熱されて蒸気となったウイスキーにはフルーツの様な香りや、人間にとって不快な成分などが混在しています。
どうやってこの香りのいい成分を抽出するかと言うと、化学反応があげられます。
ポットスチルは全て銅でできています。この銅に蒸気が接する時不快な成分のみが銅と化学反応を起こし、水と硫化銅という個体の物質に変わります。
結果、フルーツの様な良い香りがラインパイプを通る訳ですが、精留器を設置している場合は更にここから一度蒸気が冷やされ、液体と蒸気の状態を作り出します。
香味成分は比較的軽く、不快なものよりも上に向かう性質がある為、ここでもう一度香りの精査がなされ、欲しい成分といらない成分を分ける作業がされています。
ちなみに、液体の状態に戻されたものはもう一度ポットスチルの底に戻り
初めの工程の蒸留からやり直していくことになります。
これにより、ピーティーなのにフルーティーというアードベックにしか味わえないウイスキーを作っています。
ノンチルフィルタード
そして最後の四つ目ですがそれはノンチルフィルタードです。
ノンはしない チルは冷やす フィルタードは濾過ですので、要は冷却濾過をしないということです。
ウイスキーは樽熟成した後、不純物などが浮いてしまう関係から濾過が行われます。
ですが、その時多少の香り成分も飛んでしまうことがあります。
こうしたことを防ぐためにもアードベックは樽から出したそのままの状態のものを瓶詰めしています。
ですので、もしかするとアードベックを飲む時小さい不純物などが入っている場合があるかもしれません。
もちろん体に害があるものではないので問題はないですが見た目の問題から濾過する蒸溜所もあるという事ですね。
一応浮いていいる油分などは紙などに吸い付けて除去されるようです。
以上がアードベック蒸溜所のこだわり4選でした。
こだわりを知ると飲み手にどう感じて欲しいのか、作り手の思いが伝わってくる様でなんだか価値が増す気がしませんか?
豪快に飲むのもよし、一つひとつ感じる様に飲むのもよし、皆様の楽しみ方の幅が広がればいいなと思います。
アードベッグ10年
それではここで、アードベック蒸留所のフラグシップウイスキーを見ていきましょう。
アードベック10年、これが定番品になっています
バーボン樽と多少のシェリー樽で10年熟成しています
蓋を開けた瞬間から漂うピート香
口に含むと、香りがいっぱいに広がります
多少のピリリとする刺激感とその後に
かすかに柑橘系のフルーティーな香り
そして、多少の甘みと塩味が入り混じって
味わいに深みを持たせています
価格帯は6000円いかないくらいで購入することができます
是非皆様、お試しください
以上でアードベック蒸留所の紹介は以上になります。
皆様のアードベック蒸留所の解像度が少しでも、上げられることができましたら幸いです。
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