レストラン・モンマルトル
自分史を語る上でとても大切な飲食店ってないだろうか?
成績がいい時だけ連れて行って貰えたレストランとか、初めてできた恋人と入った店とか、家族との思い出の詰まった食堂とか。
食べ物を介した思い出って思い出しやすいから、俺はいくつもある。のだがその中でも「綺麗な記憶」の筆頭だった店の名前を忘れたことに気が付いた。
ベットに寝転んで本を読んでいた時にそれに気付いて焦った。ふと「あの店の名前なんだっけ」と考えて。頭の中を隈なく探してみるとそれっぽい響きとかニュアンスは見つかった。セロ弾きのゴーシュとかコンコンブルとかカンパーニュのようなフレンチな名前だった。それだけが手がかり。その店は平成が始まってすぐくらいに閉店したから。
個人的には記憶ってとっても大切だ。
10年前くらいに実家が火事で全焼して、その時に写真とか卒業アルバムとかビデオテープとか画として自分の歴史を遡れるものを全部失ってしまった。だからもう、記憶頼りなのだ。小さい頃から住んでいた家の空気感とかどんなイベント事があったかとか諸々が。忘れるっていうのは致命的。記憶に空白ができてしまうから。だから焦った。とても。
言葉を探しても見つからないから記憶の中に潜る事にした。
寒い日だった。家族4人で車に乗って青い屋根のその店に行ったんだ。自動ドアが開くとフワリと暖かい空気が出迎えてくれた。店の中にある暖炉がこの柔らかなムードを作っていたのだろう。まるで熟練の職人みたいに自分の仕事を黙々とこなしていた。
今日は両親が喧嘩していないし機嫌がいい。それだけで気分良くいられる。注文したお子様ランチのハンバーグがとにかく美味しかった。お子様ランチなのにそこだけ本格的な大人の味。よくわからんがこれが「子どもの幸せの極みか」と考えたんだ。
それでその店の名前は!。。。。。出てこない。
出てこない出てこないと考えていたら、お昼に食べた辛い焼きそばのせいか腹が痛くなってきてトイレに行って別なものを出した。スッキリしたら頭の中に「モンマルトル」というあの店の名前が出てきた。ウンコしてよかったなって人生で初めて思った。
忘れないようにタイトルにした。記憶って大切。