#005 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効かなくなってから、その後をどうつないでいくか
肺がん患者さんの個別相談において、圧倒的多数を占めるのがEGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんです。
正直なところ、ここまで相談が偏るとは思っていませんでした。
EGFR遺伝子変異をはじめとするドライバー遺伝子変異陽性肺がんでは、分子標的薬の有効性が確立していて、治療選択に悩むことはないだろうと。
しかし、分子標的薬の効果が落ちてくると、みなさん一様に悩まれます。
続けられる限り分子標的薬に縋るのか。
思い切って化学療法や免疫チェックポイント阻害薬に舵を切るか。
コントロールがついていない病巣だけ手術や放射線治療で叩いて、分子標的薬を続けるか、あるいは薬も切り替えるか。
分子標的薬が効かなくなったら、潔く無治療経過観察に切り替えて、残りの人生を謳歌するか。
遺伝子変異があると、思い悩む必要もなく分子標的薬を使う、という成功体験があるだけに、その前提が崩れたときの懊悩は、かえって遺伝子変異が無い患者さんよりも深いのかもしれません。
今回、ある患者さんのご家族からほぼ完全に近い形で、個別相談内容の公開をお許しいただきました。
実はこうして公開の許可を頂けるケースはほんの一握りで、実に約2年半ぶりの掲載です。
個別相談を始める前、「大分での肺がん診療」ブログのコメント欄で質疑応答をしていたころからのやりとりで、原稿をまとめてみたところ約25,000字、原稿用紙62枚分にも及びました。
当初は年次は伏せていたのですが、それも公開してよい、むしろ公開してもらった方が分かりやすい、とのご指摘を頂いたので、そのまま記載しています。
前文の最後に、原稿の校正を終えた際のご家族からのコメントを引用します。
早いもので、母が意識を失った日から一年が経過します。
(コロナ禍で面会制限が課される状況下、)植物状態の中でリモート面会をしたり、転院してからは毎週10分間の面会(面会できる病院を探すのに苦労しました)をしに通ったことが遠い日の出来事のように感じます。
最後は自宅に連れて帰ってあげたかった、などの後悔もありますが、治療についてはやれることをやり切りました。
そんな治療経過を読んでいただき、悩んでいる方のお役に少しでも立てるのであれば嬉しい限りです。
ID:20-009
⓵ 年齢:70代
② 性別:女性
③ 職業:無職
④ 喫煙:なし
⑤ 合併症:高血圧
⑥ 出身地域:関東地方
⑦ 居住地域:関東地方
⑧ 症状:咳、痰、息切れ
⑨ PS:1
⑩ 病理:腺がん
⑪ 他臓器転移:脳、肺内転移
⑫ 診断時病期:pT3N2M0、IIIB期
⑬ 胸水:なし
⑭ 遺伝子変異:EGFRエクソン19 欠失変異
⑮ PD-L1:5%
⑯ 経過:公開
⑰ 質問:公開
⑱ 管理人の回答:公開
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