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なぜインハウスで社内デザインコンペをやるのか?Oisix20周年ロゴコンペの裏側を全て話します

こんにちは!オイシックス・ラ・大地でアートディレクターをしています、戸田です。OisixのEC売場のアートディレクションとデザインを担当しながら、ここ数年は若手デザイナーの育成にも取り組んでいます。

それまで人の育成などやった事がなかった僕が、悩んだ末に考えついた育成の方法が社内デザインコンペでした。それから年に2〜3回の頻度でコンペを主催してきましたが、常に試行錯誤と軌道修正の連続でした。今回は、どうやってコンペを企画し実施しているのか?といった話と、つい先日行ったOisix20周年ロゴコンペで集まったデザインや審査員からのフィードバックを公開したいと思います。

インハウスデザイナーの皆さんが「うちでもコンペやってみようかな?」と思ってくれたり、審査員からのフィードバックを見て「この視点、ロゴ作りの参考になるな」と少しでも感じてくれたら嬉しいです。


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1.ロゴ案、どうやって選んでますか?

本題です。これまで複数部署のデザイナーを巻き込んでのデザインコンペを何度か主催してきましたが、毎回特に頭を悩ませるのはデザインの選考方法です。コンペに関わった全ての人にとって、より納得感があるデザインの決め方は何か?を常に考え、これまでに様々な方法を実施してきました。

①EC事業部の社員全員での投票

これは自分が最初に実施したコンペで行った選考方法です。一番多くの社員から支持を得たデザインが選ばれるシステムです。が、このシステムには、ノンデザイナーの投票者の母数が多すぎるとデザイン的観点から見ると微妙なデザインが選ばれてしまう可能性がある、というデメリットもあるという事が後に分かりました。

②お客様による投票

これはOisixオリジナルのノベルティーを作って販売した時に行った選考方法です。任意のお客様にデザイン案を見せて、一番良いと思ったものを選んでもらうシステムです。欲しい!と思ったお客様の人数が一番多い作品が選ばれるので、理にかなっているのかも?と思っていました。が、後日外部のメンターからは、「お客様に選んでもらうよりも、自分達が一番良いと思ったデザインをお客様にぶつけるべきなのでは?」という指摘を頂き、確かにその通りだな…と思いました。

③室長/マネージャークラスの限られたメンバーでの選考

①や②の過程を経て編み出した選考方法です。室長やマネージャークラスの社員=自社の戦略や経営方針を深く理解している人達と決めるシステムです。このやり方が一番手応えを感じました。

そして今回のOisix20周年ロゴコンペでは、経営的視点とデザイン的視点の両方がきちんと担保されるよう、審査員はデザイナーとマーケターがちょうど半々になるような少数精鋭メンバーで行いました。以下が詳細な選考方法です。

【一次予選】
1位だと思ったデザインと、2位だと思ったデザインを選んでもらう
1位…3ポイント
2位…1ポイント
とし、1位のデザインの合計獲得ポイントが全体の4割を越えていた場合は、その場で採用する(例えば8人で投票した場合、1位が13ポイント以上であれば即採用)

票が割れる可能性も想定していたので、割れた場合の二次予選プランも予め考えていました。

【二次予選】
一次予選の上位5作品の中から1つだけ選んでもらう
1位と2位の差が3票以上であれば即採用
僅差の場合は議論して決める

案の定、死ぬほど票が割れました。結局、一次予選でも二次予選でも決まらず、議論で決まりました。正直、これだけ割れるんだったら最初から話し合いで決めとけば良かった…と後悔しました(笑)。ただ、それだけ今回集まった作品がどれも素晴らしく、僅差だったのだと思います。

実際の投票結果↓

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2.今回のコンペの詳細

ここからは、今回のコンペ内容と結果について公開していきます。以下はコンペの概要とスケジュールです。

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◆スケジュール
5/29(金)オリエン
6/8(月)デザイン提出〆切
6/10(水)デザイン選定→ブラッシュアップ
6/12(金)ロゴデザインFIX
6/18UPから使用スタート
◆制作するもの
①ロゴA…感謝祭感があるもの
②ロゴB…シンプルなタイプフェイスベースでお祭り感無いもの

僕が社内コンペを開催する時、一番意識しているのが「スケジュール」です。コンペに参加するデザイナーにとっては、任意参加とはいえ普段の業務のアドオンでしかなく、コンペが相当な負担になります。そんな中でも最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために、制作時間は長すぎず短すぎず、オリエンでの情報量は多すぎず少なすぎず、かなり慎重に考えています。今回は、オリエンの1週間前に全てのデザイナーに事前に告知をして心算をしてもらいつつ、金曜にオリエンを行い翌々週の月曜をデザイン提出〆切としました。これは、その間に2回ある土日も(使おうと思えば)上手く使えるようにとの配慮からです。参加者に時間の余裕が作れるよう、さらに前もって各署との調整を綿密にしておく。結果的に、僕はオリエンの2ヶ月くらい前からコンペの事を一人粛々と考える事になるのです…。

ありがたいことに、自分の予想を越えてビックリするくらいたくさんエントリーしてもらいました。中には一人で3案も作ってきたデザイナーもいました。みんな忙しい中本当にありがとう…。驚きと感謝でいっぱいです。

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こちらはロゴA。主にOisix20周年で新設される感謝祭ページのファーストビューで使われるものです。


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こちらはロゴB。主にOisix.comのヘッダーロゴとして使われるものです。

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参加者13名、エントリー作品数19点、個人での最多提案数3案。

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3.結果発表

では、いよいよ結果発表です。ちなみに今回のデザインの評価ポイントは、以下の4つです。これはオリエンの際にデザイナーにも審査メンバーにも伝えています。

1. (ロゴAに関しては)感謝の気持ちが伝わる感、楽しい食卓を感じさせる要素があるか
2. Oisixらしさがあるか
3. どんな売場ページに置かれても視認性があって目立つか
4. 大小どのようなサイズで使われても視認性があって目立つか

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今回、急遽特別賞を作りました。これは、惜しくも3位以内に入らなかったものの、デザイナー観点から見てポテンシャルを感じた案に送った賞です。それがこちら!


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かわいいですよね?実はこれ、デザイナーではなく、フロントエンドエンジニアの社員から上がってきたデザインなんです。これには審査員もビックリでした!しかも彼は今回2点もデザインを応募してくれているのです。「面白そうだから参加してみた。いざやってみたら難しかった。」との事でした(笑)。Oisixへの愛を感じます。

この作品に対する、審査員からのコメントです。

“ロゴとしての完成度をブラッシュアップできたらこれが一番よくなりそう。伝えたいこと、お客さまと生産者への感謝、楽しい食卓( ここが現状弱いが)、求められていることに応えてうまく1つのロゴにまとめられていると思います。ただ、ロゴデザインのセオリー的なものをあまりわかっていない模様。そこをだいぶ改善する必要があります。が、この人は良いデザイン作れる可能性を感じました。”

では、第3位です。

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Oisixのロゴ、おうち野菜を使ったロゴ。文句なしにOisixらしいです。

この作品に対する、審査員からのコメントです。

“とてもハートフル!で素敵なロゴだと思いました。全体的にまとまっていて良いと思いました。”
“Oisixの家の形をいろいろ変えてみるというのは今回に限らずやってみても面白そうだなと思います。特にアプリのログイン画面の画像が違うとか代り映えがして面白いかな、と。”


続きまして、第2位。

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Oisixの売場に映えるこちらのロゴ。3位のロゴを担当したデザイナー同様、20代若手デザイナーの作品です。

この作品に対する、審査員からのコメントです。

“最後まで迷った案でした。同じくアイキャッチが良くインパクトもあったのでとても良かったです。コンセプトも素敵でした。1位との差は私の中では白のバランスだけかなと思います。”
“視認性の高さと、タイトルに置いた時に座りが良さそう。感謝祭のセール感とも合いそう。”

そして、栄えある1位は…

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こちらのデザインに決定しました!

この作品に対する、審査員からのコメントです。

“ロゴというよりはアイキャッチが良くお店の看板のようなインパクトが期間限定ロゴ(アイコン)にはぴったりだと感じました。”
“唯一と言って良いほど「感謝祭」感がなく、規定は満たしていないかもしれませんが、「感謝、ありがとう」感が一目で伝わるのと、単純にロゴではないアイキャッチロゴとして大きさを問わず使えそうだから、という理由です。”

1位に選ばれたロゴはブラッシュアップをしてお披露目へ。

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この結果は、後日参加したデザイナー達を集めて結果発表を兼ねたフィードバック会で大々的に発表しました。その際に審査員から出た総評コメントの一部をご紹介します。

“今回は、お題がかなり難しかったのではと思っています。20周年という記念イヤーであるという意味でOisixのルーツも気にしながらも、「楽しい食卓」を表現してほしいというお題は要素が多すぎたかなと。ただ、みなさま色々な趣向を凝らして提案をいただき審査楽しかったです。”
“普段一緒にお仕事しない方がたくさん参加されたと思うので、誰がどんな魂を込めてデザインされたのかなぁ、って想像しながら見させてもらいました。年に一度の楽しみだったりします。伝え方も表現の仕方も本当に色々あるなぁととても勉強になりました。ちょっと話ズレるけど、こうゆうコンペもっとしたいですね。参加してて楽しいし、今まで見たことない新しいデザインイメージがあってこの見た目ならこんな特集に展開できそう!とか逆から入るのも面白いなぁと。”
“エクゼキューションイメージはとても大事です。フォーマットが決まっていたのでなんとも言えませんが、やはり実際に使われるイメージとしてサイトに載せてみて検討するとまた違ったアイデアが浮かぶと思います。あとは、ベンチマークからデザインコンセプト作成にたくさん時間をかけて、最後に実作業として「シンプル」から「ありえない!」までたくさん作ってみると良いかも知れないです。”
“デザインの良いところは、やったらやった分だけ力がつく事だと思っています。但し、バスケのシューティング練習や野球の素振りのように、その都度自分の問題点と向き合ってチューニングをする事が必要不可欠です。今回作ったデザインを自分だったらどうやって売場に落としこむか、をシミュレーションして作ってみても良いかもしれません。今回の結果を受け止めて自分なりに分析して、今日からの仕事に向き合って頂けると嬉しいです!”
“デザインが上手くなるには、今回のインプットをもらったらそれを元にもう一回作るしかない。去年のコンペと同じ順位だった若者達は(※)、今回の要件定義でもう一度ロゴを出して見てもらうとかしてもらってもいいかもね!”
※昨年(2019年)もOisix19周年ロゴコンペを行いました

最後に.コンペの無いインハウスで、コンペをやる理由

そもそも、Oisix ra daichiは事業会社なので、業務としてコンペをすることはほぼありません。いや、全くありません。少なくとも僕が入社するまではありませんでした。そもそもやる必要が無いからです。そんな環境でなぜ社内コンペをやるのか?理由を挙げればたくさん出てきます。

・デザイナーの成長のきっかけを作りたいから
・自部署の業務しか出来ないデザイナーにチャンスを作りたいから
・ノンデザイナーにもデザインに興味を持ってほしいから
・生産性重視で仕事として向き合いがちになっているデザイナーに、デザインって面白いんだっていう気持ちを取り戻してほしいから
などなど

このように、個人的にはやるメリットはたくさんあると思っています。が、今回Oisix20周年ロゴコンペをやって思ったのは、コンペは、Oisixらしいデザインとは何か?をデザイナーとノンデザイナーが一緒になって考えるきっかけになっているなという事です。

Oisix ra daichiではデザイナー社員が40名程いるのですが、自分が入社した2017年の夏から半分の約20名は新しく入社してきていて、ほとんどが若手。経歴やバックグランドも様々です。また、事業部配属のため、チームが違うとなかなか部署間でのコミュニケーションが取れない為、横軸で行うこうしたイベントは貴重な機会になる、という事に改めて気付きました。

今後も、Oisixらしいデザインとは何か?を役職問わず考えたり意見を交わしたり出来る場をたくさん作っていきたいなと思っています。最後まで読んで頂き、どうもありがとうございました!!



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