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「きらびやかなまち」

地下鉄に乗れば、20分もかからずに大きな駅に行ける。便利なことだ。夜9時、あっという間に最寄駅に帰ってきた私は、さっきまで居たデパートの煌びやかな光景を懐かしく思う。ここでは平日、日中の用事が終わったあとに電車に乗ってもいいのだ。

百貨店にはなんでもあった。夕暮れをビルが隠し、駅と駅のあいだの道を車が走り、歩道橋には人が渦巻いていた。

知っている人はいなかった。オーバーサイズのTシャツとジーパンで、適当に雑貨屋をめぐり、コップを2つ買った。

最寄駅から家までは少し歩く。といっても10分か15分で、短くもなく長くもない。考え事をするにはちょうど良い。幸せで仕方なかった。しかし突然、行かなければならない実習先に連絡もせずに家で寝ている私になっていた。慌てて実習先に走ると、そこは真っ暗で、私はなにも求められていなかった。私がいるはずの場所にはスーツを着た長身の女性が座っていて、はきはきと喋っていた。頭が痛くなる。


はっと息を吸う。夢だった。何がどこまで夢だったのだろう。まだ夢なのかなにかわからないが、誰かなにか話しかけている気がする。消えていく夢が置いていく暴力性に圧倒されて目が開かない。声が出ない。さっきまでの記憶を思い出さないといけない。

あ、でも話しかけられている。私は相手の手をとり「お」「は」「よ」「う」と指で文字を書いた。母は「朝ごはん、胡桃パンか、ご飯としゃけ、どっちがいい?」と聞いた。そばにいたのは、私が小学4年生のころの母で、私は実家の布団に横たわっていた。さっきまでもそうだっただろうか。目をつぶったまま、なぜか「お母ちゃん、遅刻しやんの?大丈夫?」と声を絞り出すが、母は「何それ!あんた夢見てたんやに」と大きな声で言う。私は「そっか、よかったぁ〜」と言い、また夢に傾き始める。あ、ご飯のほうがよかった…と思い出すが、その頃には雨の音とともに眠りに沈んでいる。

シャワーの音がする。昼間からお風呂に入っていて、以前好きだった人の身体を洗う。彼の膝から脛にかけてボディソープをつけて、手で擦ろうとすると「そこで泡立てるな」と笑われる。顔を見合わせて、2人でたくさん笑う。彼といる時の私はこんな風に笑うんだったと思い出し、なぜか悲しい。

水色の瓦屋根の上に登って、山を見ている。山を背景にりんごを撮ろうとしていたが、知らない犬がりんごを咥えてしまう。私は屋根を降りようとするが、怖くなって、父にすがる。やっとのことで地面に降りると、屋根の下にはこの土地で出会った友人や親戚がいた。室内で何かを食べたりする。

薄暗い深夜の書庫で、クラゲの水槽に手を突っ込んでいる。クラゲやウミウシが私の手にまとわりつく。私は透明な体に金色の筋が入ったクラゲの写真を撮る。


静かに穏やかに目が覚める。外からは工事の音がする。悲しくて仕方がなく、自分をあやすのは難しいことだよなと反省し、眠ることにする。



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