いつかの夢 爆発と嫉妬
16時ごろだったかな?私は友達のお家を出て(友達は出掛けていて、合鍵をもらっていたので、それでお家を閉めるつもりだった)、
自分の住むお家に帰ろうとしていた。
少し名前を聞いたことのあるような俳優さんが逮捕されて
連行されていく様子がテレビに映っていた。多分、妻へ暴力を振るった罪で。
彼は両端を黄色い服を着たひと──なぜか警察ではなく、ボランティアさんのような──に固められ、野次馬の群れの中、連行されていた。
場所は馴染みある商店街だった。なんとなく、今いる場所から近い気がした。
その映像には勿論商店街のお店たちが映っているが、人波のなかで
書店だけははっきりと認識できた。
店頭では、将棋界の若いスーパースターの特集が組まれているようだ。
連れていかれる人はなにか大きな声で文句を言っている様子だけど
音声は少しだけしか入ってない。
ぎゅーっとズームできるカメラで、遠くから撮影しているんだろう。
それにしても周りに沢山人がいる。
あそこの商店街は若い人たちにも人気な場所で
唐揚げとかタピオカとかあるし、服屋さんも若者向けなものがあるし
大学生もよく行く場所だ。今日も賑わっていたんだろう。
何か掲げた。連れていかれる男の人が…免許証?会員証?淡いレモンイエローのカードを右手で。なんだろう? そのあと仕舞った。なんだったんだろう?
気づくと私は現地に居て、彼の後ろから商店街の人垣を見ていた。
彼は突然振りかぶって、遠くの前の方になにかを投げた。
なにかは飛んでいき、着地とともに爆発が起こった。
商店街の屋根まで届くような爆発で
群衆は束の間、静止した。
うわあっという声が上がる。
あっという間に雑多な悲鳴になる。
人波が逆流してくる。逃げる。
犯人を取り押さえていたボランティアさんのうち1人が
「殿下!」
と叫んでいたのを聞いた。
もう暗くなり始めていた。
なぜか、逃げた先でも爆発が起こっている。
「火事だー!火事ー!」
と叫びながら走る。
あるアパートを見上げると電気がついている。
人がまだ残っているんじゃないか、ちゃんと聞こえているのか不安になる。
みんな逃げないといけない。
しかしよく見ると、そのアパートは廃墟で人は住んでいなかった。
なーんだ、と安心する。なんで人がいるなんて思ったんだろう。
気づくとデパ地下のような場所にいた。
そこでは高校時代の同級生だった女子Aと、夕飯の買い物をしていた。
「それでさー、犯人が爆弾投げてさー」
と今日見た出来事を話していると
B先生と遭遇した。
どうやらこの世界でAと自分は
B先生に面倒を見てもらっているらしい。
B先生は中年男性で、朗らかな感じだ。
それくらいしか、知らない。
朗らかに「最近どうですか?」と聞く先生に
Aは自然と最近の心情を吐露する。
少し涙ぐみながらも、徐々に言葉が出てきて
先生は優しく頷いている。
Aはそんなこと思ってたんだという驚きと
よくそこまでB先生のことを信用できるもんだという驚きを覚える。
実はすごく仲良かったりするのか…?とか考え始める。
Aはついには泣きながら話し続ける。
B先生はどうするんだろう?と興味深く見ていると
先生は優しい言葉をかけながら、笑顔でAの頭を撫でた。
次にAの顔をギュッと両手で包みこみ、目を見つめて
優しい言葉をかける。
何度も。
私は思わず、一歩下がる。何だこれ?
何だこの…慰め方。
Aは喜んでいる。
私は、気まずくなる。これは…
寵愛じゃないか。私はこれを見ちゃいけない。
見たくない。
突如として、B先生のことが魅力的に思えてくる。
私にもしてほしい。Aだけなの?と理不尽さを感じる。
しかし、私は寵愛を受けたいだけだ。
そのためにそれっぽい心情を吐露すれば、それは…条件を満たすだろうか。
ていうか、AとB先生は私の知らないところで仲が良くて
私はそもそも部外者なんじゃないだろうか。
そんな中に「私も私も!」と入っていけるか。
嫉妬の悪魔に取り憑かれ、2人を傍観する。
B先生のことなんかどうでもいいじゃないかと頭ではわかっている。
心が許さない。愛されていない自分を許さない。
気持ちが悪い。
B先生が去り、Aが顔を赤らめながら、少し照れくさそうに鼻をすする。
へへ、こんな話しちゃったなんて俯瞰的で、現実に戻ってきているのがわかる。
私はぎこちなく笑う。私なんて、爆発に巻き込まれていればよかったのに。
私だけ、空想の中でまだ煙に包まれている。
起きると夢だと分かった。