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「海に眠るダイヤモンド」は作品そのものがダイヤモンド

20年以上前いやもっと前の話。
テレビで廃墟となった軍艦島が映し出され、その島はかつて5000人が暮らす日本の最先端の場所だったことが紹介されていた。
その映像を観た時、いつかこの島に行ってみたいという思いに駆られた。

数年前に軍艦島上陸ツアーに参加しその姿を目の当たりにした時には
懐かしさでも恋しさでもない、胸を締め付けられるような気持ちでいっぱいになったことを覚えている。
縁もゆかりもない島なのになぜだろうと不思議だった。

「海に眠るダイヤモンド」に引き寄せられた

2024年最後にしてやられた。
「そう来たか」と思わせたまさかの最終回。

実に壮大なドラマだった。
いや、塚原あゆ子✖️新井順子✖️野木亜紀子チームで主演が神木隆之介、
舞台は軍艦島で70年に渡る作品と聞いた時から、ただならぬ壮大なドラマに
なるだろうという予感はしていた。
が、予想を遥かに超えるウルトラCだった。

初回から度肝を抜かれたが、毎回毎回刺さる、刺さる。
そこには必死で生きていた人たちがいたこと、厳しく酷い現実が
あったことをこれでもかと思い知らされる。

その中で描かれる人間ドラマに引き込まれないわけがない。
なんというか、無駄がない。
1シーンも一言のセリフも聞き逃さずに完全視聴したいと思ってしまう。
なので、CM中も気を抜けずトイレにも行けない。

7話くらいから胸を締め付けられるような展開が続いて、観ているこちらも
苦しくなった。
おそらく鉄平はもう亡くなっているのだろうという思いと生きていて再会してほしいという願いが私の中でちゃんぽんしていた。
でも、最終回では壮年期の鉄平は描かれず、私たちの想像に託された。
再会はないまま終わったが、だからこそ庭を埋め尽くすあの一面のコスモスに感動できたのだろう。

最後、カフェの現代シーンで朝子が「インスタを始めたの」と微笑む姿は
端島で青春時代を過ごしたあの頃の笑顔と重なって見えた。

死んだ魚のような目をしていた怜央が鉄平の思いに触れ人間らしくなって
いく様、青年期の生き生きしていた鉄平からの自己犠牲を払い苦悩の中で逃げ惑う鉄平の生き様。
あんなに端島のために駆けずり回って懸命に生きていた鉄平がなぜあんな理不尽な人生を送らなければならなかったのか。
やりきれないにも程がある。
鉄平は最後まで外勤さんだった。

そしてこれを見事に演じ分けた神木隆之介って何者?特殊な術を持つ忍び?
怜央と鉄平が被った瞬間が皆無だった。
この作品の構想が練られる中で、制作陣が満場一致で「主役は神木隆之介」と決まったという話に今なら頷ける。
彼以外には考えられない。

タイトルは複数の意味があると思う。
端島で眠る石炭、そこで暮らした人々、鉄平が朝子への想いと共に
置いてきたギヤマン、そして朝子の胸に眠るそれらの思い出。
そしてそのダイヤモンドは、端島に縁もゆかりもない怜央へと引き継がれる
という終わり方も素晴らしかった。

もう既に3周したけど何度でも見返したくなる。
朝子と幸せに暮らす人生が送れなかったからこそこの作品が美しいもの
になったのかもしれない。
でもやはりこう思わずにはいられない。

鉄平には幸せになって欲しかった・・・


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