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雪辱を晴らす


「これを決めるために大学に来た」

そう思った。

この話は、一年前の自粛期間に書いた
「今なんでここにいるの?」
って言う物語の続きになる。


2021シーズンは活動自粛と共に幕を明けた。

大学のコロナ感染対策の方針に従うことで僕たち北大サッカー部は活動と自粛を繰り返し、つい3週間前まで部活全体として合計で2か月くらいしか練習出来ていなかった。

そして、今から約3週間前の活動再開の許可をもらう頃に、総理大臣杯の組み合わせが発表され、僕たちの初戦は前年度北海道優勝チームの岩教大だということが分かった。

対戦相手が決まった時の気持ちはポジティブだった。

2年前に2部リーグに降格してから1部のトップチームである岩教と戦う機会はなく、それを待ち望んでいたから。

部活が再開してから約3週間、岩教に勝つことを最優先に考えて活動してきた。何試合も岩教大の試合のビデオを観てどうすれば勝つことができるのか、そのためにどのような練習が必要なのか、を考えた。

とても短い期間だったけれどできる限りの準備はできたと思う。

そして、昨日対戦した。

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一番大切にしていたことは相手を過度にリスペクトしないこと。
焦ってボールを蹴るのではなく、ボールを繋いで自分たちのサッカーをすること。

序盤、作戦通りゲームを先に落ち着かせたのは僕たちで、プレーをしていく中で「全然やれる」という思いになっていった。
前半は拮抗した展開で、0-0で折り返した。

ハーフタイムは今まで準備してきた戦術と実践のギャップを埋めるために話し合い、解決策を見いだせた点もあった。

この時に”良い流れ”が自分たちにあると感じた。

そして後半11分、ついに先制点を奪うことができた。

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僕が北大サッカー部に来て初めて岩教大に対してリードする形となった。
自分たちの戦術が上手く機能していた。

この時には”勝ちたい”という気持ちから”勝てる”という気持ちに変わっていた。

ただ、後半の給水タイムの時を過ぎた時くらいから相手に自分たちの陣地でボールを回される時間が多くなっていた。足をつる選手もこちらには多くいた。

それでも何とか耐え続け、
90分が経過しロスタイムの5分が経った頃、

失点した。

ラストワンプレーだった。

掴みかけていたはずの大金星がいとも簡単に手からすり抜けていった。


後半終了の合図とともに
「ああ、本当にこんなことがあるのか、、、」って思った。
でもそれと同時に、高校の最後の試合が鮮明に頭に蘇ってきて自分でも驚くほど一瞬で気持ちは切り替わった。
なぜなら、
この試合に引き分けはなく後半終了後”PK戦”が待っていたから。


PK戦と僕との物語は
高校時代の僕を知っている人ならみんなわかる。

知らない人は以前書いた「今なんでここにいるの?」という記事を読んでほしい。

簡潔に説明すると、僕には勝ったらチームの目標を達成できるという試合でPKを外した経験が2度ある。

高校最後の試合は2-2で延長戦を終え、PK戦に突入するという昨日の試合同様に白熱した展開だった。
僕はそこでPKを外し高校サッカーを引退した。

当時は自分のせいでチームメイトを引退させてしまったこと、同じミスを繰り返してしまったこと、PKを蹴る前に恐怖を感じてしまったこと、様々なことに対して本当に悔しくて情けない気持ちでいっぱいだった。
自分のことが嫌いになりそうだった。

でも、そこでとても大きな後悔を残してしまったからこそ、大学でもサッカーを続けようと思った。
大学では後悔を残したくない。

そんな思いをもって入部し、
気づいたら大学4年生になっていた。

そして、

「大学サッカーで後悔を残したくない」

という思いは時間が経つにつれて、

「大学サッカーを通して成長したい」

という思いに変わっていた。

だから、特別PKにもこだわってなかった。


けれど、ちょうど4年前の夏に経験したシチュエーションが現実になって僕の前に現れた。

「ああ、本当にこんなことがあるのか、俺が主人公になるチャンスだ。」

先ほど、気持ちは一瞬で切り替わったと書いたけど具体的には、


”やっと雪辱を晴らす時が来た。

俺はこれを決めるために大学サッカーに来た。”


自分のために用意されたシチュエーションだと思った。

そして大学で初めてのPK戦が始まった。

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岩教大はPKも上手くて、
外したら自分たちの負けが決まるという状況で、
僕に順番が回ってきた。
本音を言えばやっぱりほんの少し怖さがあった。

だけど、それを大きく超える自分に対する期待があった。
早くPKを決めた自分に会いたい。
そう思ってボールをセットし、笛が鳴った。

4年前とは全く違った。
高校の頃、
異常なほど大きく見えたゴールキーパーは普通の人間に見えた。

PK独特の静けさの中、
決めるという一心で足を振りぬいた。


ボールはゴールに入っていた。


体中から色々な思いが湧き上がってくるのを感じた。
4年越しに雪辱を晴らすことができた。

高校の最後の試合でPKを外して泣き崩れていた僕に声をかけてくれた人たちに少しは恩返しできた気がする。あの時はありがとう。
そして4年前、自分を非難し続けた自分も少しは報われたかなと思う。



しかし、岩教大との試合には負けてしまった

サッカーはそう簡単に上手くいかない。

負けてしまったのはPKを外したからじゃない。
90分で勝つことが出来なかったから。
もう1点決めることが出来なかったから。

試合直後、格上相手に善戦することができて良かったと感じる自分がいたのは正直なところ。

だけど一晩経った今、昨日の試合は勝たなければいけない試合だったと心の底から思う。
北大サッカー部はまだまだ強くなれる。
今回の敗戦を糧により強いチームになっていくべきだと思う。

そのためにやれることは全てやっていこう。

大学サッカーでPKを決めることは一つの目標だったけど、それはあくまで僕が大学でサッカーをする理由の一部に過ぎない。

大学でも激アツな試合はできる。
残りの4カ月、楽しみ尽くして北大サッカー部を引退したい。

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