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〇古本食堂/原田ひ香
笹巻けぬきすしは海苔巻きのようになっていて、
普通の海苔巻きの半分ほどの寿司を
クサザサでくるりと巻いてある。
笹の香りも良いし、目にも鮮やかだし、
何より、腐りにくくなるらしい。
彼女が最初に取ったのは、かんぴょう巻きだった。
笹の葉の下は海苔が巻いてある。
しかし、普通のかんぴょう巻きとは違って
真ん中にかんぴょうが入っているわけでなく
端に入っている
目の前で、食べている様子を見て、
その匂いと味と食感がありありと思い浮かんできたのだ。
かんぴょう巻きはぎゅっと巻かれていて、
でも、固すぎず、柔らかすぎず。
寿司飯とかんぴょうがしっくりなじんで、
醤油なんてなくても十分おいしかった。
たぶん、寿司飯に塩味がしっかりついていたのだろう。
決して濃すぎない味で、とてもおいしかった。
さらに珊瑚さんに勧められて、もう一つ手に取った。
それは玉子焼きのお寿司だった。
これまた、普通の寿司とは違っていて、
海苔の代わりに薄い玉子焼きに包まれた巻き寿司なのである。
玉子焼きの味は甘くない。
塩味の玉子焼きがしっかりした味付けの寿司飯をくるんでいる。
ボンディのビーフカレーは大きな肉がごろごろ入っている。
ご飯にぱらぱらとチーズがかかっていて、
別にジャガイモが二個とバターが付け合わせだ。
濃い褐色の香り高いルーを、
ソースポットからレードルですくい取り、
ご飯にかける時のどきどき感はなんとも言えない。
口当たりはまろやかで柔らかく、
まるでビーフシチューか何かのようなのに、
それはすぐに裏切られる。
実はその底にしっかりしたスパイスの辛さがひそんでいるのだ。
読み終わったところで、しょうが天ぷら蕎麦が運ばれ来たので、
あたしは手紙をたたんでバッグにしまった。
細くて白い更科蕎麦で、腰があって美味しい。
そこにたっぷりと細切りの生姜の天ぷらがのっている。
生姜の天ぷらはそれだけで食べると、
刺激が強くてちょっと驚くが、
蕎麦や天つゆと食べると、ちょうどよくてマイルドになる。
何も言っていないのに、ボルシチと二種類のパン、
キャベツのサラダが運ばれてきた。
私はグリヤーシのランチセットと追加でピロシキも頼んでみた。
グリヤーシが来る前に、ボルシチを食べてみる。
ちょっと酸味のある赤いスープには
ジャガイモやキャベツ、トマトなどの野菜と牛肉の塊を
スライスしたようなものが入っていて、
サワークリームが添えられている。
とても柔らかく煮込まれていて食べやすい。
キャベツのサラダが酢と油でしっかり和えられているのは
ザワークラウトの代わりなんだろうか。
それらを食べ終わった頃に来たグリヤーシは、
豚肉とトマトクリームのシチューと言ったらいいだろうか。
それがグラタンのように熱く焼かれている。
少し味が濃いめでパンと一緒に食べるとちょうどいい。
初めて食べる料理だけど、どこか懐かしいような、
馴染みのある味だった。
カレーパンはぷっくりと丸く、
カリカリを通り越してガリガリと言ってもいいくらい
歯ごたえがあって、
中のカレーは本格派の辛口、
隅々までしっかりカレーが入っている。
「上海炒麵は、固い麺と柔らかいのが選べるの。
基本は柔らかい麺をちょっと焼いた上に
もやしと豚肉を炒めたものがのっているんだけど、
硬い方はぱりぱりした、
いわゆる揚げ焼きそばの麺で、
同じ具材のとろみがついたあんがのっているの。」
まずは柔らかな麺の方から手を付けたのだが、
細麺を軽く焼いてあって、
豚肉、もやし、タマネギなどの野菜を炒めたものが付いている。
シンプルな料理に見えて、深いコクと味わいがあった。
神田神保町・・・行ってみたいな。
昔の人達が愛した料理は
きっと今でも色んな人に愛されてる気がする。
そんな料理が美味しくないわけない。