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〇バニラな毎日/賀十つばさ
シナモンスティックにカルダモン、
クローブ、フェンネルを軽く煎って香りを出す。
私は別の鍋で牛乳を温めてから、
スパイスの上に一気に沿いだ。
さっそくチャイのような香りがたちこめて・・・
私はそこにスパイスの香りが付いた牛乳を、
少しずつ加えてペースト状に練っていく。
さらに牛乳を加えてのばしていき、
全て入れたら蜂蜜を加え、
ナツメグも少々、攪って加える。
「ニューヨークチーズケーキは、
クラシックチーズケーキとも呼ばれるくらいで、
実はチーズケーキの元祖です。
茶色いベイクドチーズケーキとの違いは、
焼き方だけです。」
説明しながら、粗い砂のようになったクラッカーに
砂糖と溶かしバターを加え、
私はフードプロセッサーを再びました。
私はバターと砂糖を加えたクラッカーのクラムを
丸いケーキの型に入れると、
メジャーカップの底でプレスして底に敷き詰めた。
やわらかくしたクリームチーズに砂糖、
サワークリーム、全卵、卵黄、そして薄力粉。
「そして最後にバニラ、エクストラクト――」
バニラエッセンスは人工的に作った香料だけど、
エクストラクトはバニラビーンズを
アルコールに漬け込んで抽出したものだ。
私はケーキ型の下部を、アルミホイルでしっかり包んで
水が入らないようにすると、
オーブンの扉を開けて、
あらかじめ湯を貼っておいた天板を引き出した。
レモンイエローの表面は傷ひとつなく、
エッジも美しく出していて、
レアケーキかと思うぐらいしっとりとした質感を
湛えている焼き上がりだ。
完璧なのは外観だけでなく、ナイフを入れると、
間違いなくベイクドだとわかる濃密な断面が出てくる。
土台のクッキー生地もいい具合に水分を吸収して、
ほどよいサクサク感。
「レモンメレンゲパイ」を思いつき、
急ごしらえで並べてみた。
パイ皿でパイ生地を焼いたら、
レモンカードという、カスタードにレモン果汁を加えた
甘酸っぱいクリームを流しいれ、
冷やし固めたらその上に角を立たせた
真っ白なメレンゲを盛るようにのせて、
バーナーでこんがりと色をつける。
高さもあって見栄えがいいわりに、
生クリームなど使っていない素朴なケーキで、
食欲がなくてもぺろりと食べられる。
「わかった!フランだ!フランパティシエ!」
日本で言うところのクリームパンみたいなものだろうか。
レモンパイよりもっと素朴で愛されているお菓子だ。
やはり、練り込みか折り込みのパイ生地を型に敷き、
焼くとプリンのような弾力がでるカスタード生地を
流して焼いただけのもので、
カスタードタルトとも呼ぶ。
アジアで流行ったエッグタルトにも近いが、
フランスのそれは大きく焼いてカットしたものが売られている。
卵とバニラの風味を楽しむ。
シンプルにもほどがある菓子だが・・・
同じくラウンド型のホールケーキは、
サイドに苺の断面がモザイクのように
美しくあしらわれている。
いびつ、ふぞろいであることが
逆に可愛さを出していて、
ヴィクトーの腕前に私もうなった。
底に薄いスポンジ、ビスキュイ生地を敷いてから、
苺の切り口を型に貼るようにして並べ、
苺で埋めたら隙間を黄色いクレームスリーヌで満たし、
まだビスキュイ生地を蓋をするようにのせて、
トップにはピンクに色付けされた薄いマジパンを重ね、
スライスされた苺を優雅な感じで飾りにのせる。
試食して、彼が苺大福を例に出した意味がよくわかった。
大福のどっしりした重さの中に
フレッシュな苺があることで、
重すぎず甘すぎず、
ちょうどいいバランスになるのが苺大福。
このケーキも、重いバタークリームと甘いマジパンに、
爽やかな酸味が加わることで、
絶妙な味わいになる。
互いに強い部分をまろやかにして、
苺の美味しさを際立たせている所は、
苺大福を越えているかもしれない。
思い出したように、飴色のキラキラとしたそれを
楊枝に刺して私の口元に差し出すので、
しかたなく口に入れた、
その瞬間、なつかしい味が、口の中に広がった。
まわりの砂糖衣が薄すぎず、厚すぎず、
さつま芋そのものの甘さを壊さずに引き立てる
ぎりぎり感がなんともいい。
そして鍋に分量の牛乳を注ぎ、
バニラの種とさやも一緒に加え、火にかけた。
その間に、ボウルに卵黄と砂糖を入れ、
泡だて器で擦り混ぜるように
もったりとして車で攪拌する。
ここに八十度くらいになった牛乳を加えるのだが・・・
私は持っているエクレールの出来具合を見た。
ショコラとカフェ、二つ注文したが、
細かくて品の良い大きさだ。
実際安いものはコーティングチョコを
かけたりしているからしかたない。
フォンダンとは、砂糖と水を煮詰めて作った
砂糖衣のようなものだが、
それにチョコレートやコーヒーのエキスを
混ぜて風味や色をつけて、エクレールにのせるのが本来のレシピだ。
私はせっかくだから彼のケーキも一口だけ
味見させてもらおうと、いただいてみた。
ピスタチオのムースの下の赤いジュレは、
フランボワーズ、苺、カシスが入っているようで爽やかだ。
これだけでは、さっぱりしすぎるので、
その下にはミルクチョコレートのクリームが
隠し味的にはさまれている。
土台のビスキュイもレモンが効いている。
さすがの一品。
美味しいスイーツのレシピたちが
盛りだくさんだった。
いつも食べているケーキの
本当の姿がわかって、
本場の味を試してみたくなった。