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〇図書館のお夜食/原田ひ香


最初に口に入れた感じはマイルドなのに、
だんだんスパイシーになっていく、
独特の風味がある。
こういうのを癖になる味というのかもしれない。
人参やジャガイモがきれいにサイコロ状に
切って入っているのはわかったけど、
同じように半透明に煮込まれている野菜が分からなかった。
「これ、なんだろう。
柔らかくてみずみずしい野菜だけど・・・」
「大根よ」
「お肉は何が入っているんだろう?
お肉のうまみはあるんだけど、姿が見えない。」
さいの目の野菜がすべてを主張していて、肉が隠れている。
裂けたような肉の切れ端だけ見えた。
「あー!わかった。コンビーフですね。」

しろばんばのカレー

おぬい婆さんの作ったライスカレーは美味しかった。
人参や大根や、馬鈴薯を賽の目に刻んで、
それにメリケン粉とカレー粉を混ぜて、
牛缶を少量入れて煮たものが、
独特の味があった。

しろばんばのカレー

確かに、人参しか見えないくらい、
ぎっしり人参が入ったご飯なのだ。
まず、スープに口をつける。
ジャガイモを粗く潰したポタージュだった。
派手さはないが、しみじみとした旨みが身体に染み渡った。
次に人参ご飯を手に取った。
一口頬張って、思わず声が出た。
人参の甘み、醤油の香ばしさ。
なんて優しくて、おいしいご飯だろう。
おかずは蓮根のきんぴらとぶりのあらの煮つけ。
どちらもあっさりとした味付けで、ご飯に合う。

「ままや」の人参ご飯

「いろいろと考えたんだよ。
もしかしたら、あのきゅうり、
本当はピクルスのようなものじゃないかとも思った。
だけど、他の訳を読んだりしても、
あそこはパンとバタ―とキューカンバとしか書いていないようだ。
生のきゅうりをかじったとも思えないんだが・・・
というわけで、自分なりに考えたのが、これ。
パンとバタ―ときゅうりのサンドイッチ。
それから、さすがにそれじゃ、寂しんで、
ローストチキンを使ったサンドイッチも作ってみた。」

赤毛のアンのパンとバタときゅうり

柔らかくて白いパンに緑色のものが挟んであった。
一口食べると、確かに、キュウリの味と、
バターの味が口の中に飛び込んできて、
シンプルながら味わい深い。
サンドイッチの皿には小皿がのっていて、
そこにはグリーンピースが添えられていた。
口に入れると柔らかく茹でられたグリーンピースで、
バターの風味がする。

赤絵のアンのパンとバタときゅうり

「今日は鰯を炊いたものが主菜、
そのお汁でおからを炊いたやつが副菜。
この組み合わせは、彼女の小説に何回か出てくるんだよ。
それから、けんちん汁。
ご飯は普通の白いご飯に半分は手作りのゆかりを混ぜた、
ゆかりご飯にした。」
鰯は甘辛く煮てあり、ご飯に合う。
だけど、その少し生臭くなった口に、
ゆかりご飯を入れるとさっぱりしておいしい。
白いご飯とゆかりご飯、交互に永久に食べられそうだ。
おからはその鰯の旨味が入った汁を吸って、こってりとうまい。
中に入っている、人参や干し椎茸がアクセントになっている。

田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん



昔の小説の中の料理が
ずらりとでてくる!!!
こういうの、すごく興味があった。
現代のおいしい料理小説ばかり
読んでいるから、
昔のエッセイや本も
読んでみたいなあと思うようになった。



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